耐震補強の補助金とは?申請に必要な条件から方法までご説明!

多くの皆さんが自分の所有する建物の耐震補強をしたいとお考えだと思います。しかし、費用がネックとなり、なかなか工事に踏み切れない方が多いのが現実ではないでしょうか。地震対策への社会的な高まりの中で、耐震補強は公的な助成金を受けることが可能となっています。
ただし耐震補強の助成金を受けるには、建物が定められた要件を満たしていること、定められた耐震性能を実現する工事をきちんと実施することなどが求められます。耐震補強の補助金を活用したいという皆さまのための基礎知識をまとめてみました。

耐震補強の補助金とは

災害に強い国土・地域の構築に向けた建築物の耐震化が国策によって進められ、耐震補強への補助金により助成されてます。
耐震改修促進法が改正され、要緊急安全確認大規模建築物(病院、店舗、旅館等の不特定多数の人が利用する建築物/小学校、老人ホーム等の避難弱者が利用する建築物/火薬類等の貯蔵場・処理場のうち大規模なもの)、要安全確認計画記載建築物(地方公共団体が指定する緊急輸送道路等の避難路沿道建築物、都道府県が指定する庁舎、避難所等の防災拠点建築物)については、耐震診断が義務付けられることとなりました。
耐震診断を義務付けられた建築物の所有者が実施する耐震診断・補強設計・耐震改修あるいは超高層建築物等の所有者が長周期地震動対策として実施する詳細診断・補強設計・改修工事に対して、国が事業に要する費用の一部を助成するものが、「耐震対策緊急促進事業」です。
耐震対策緊急促進事業には、「地方公共団体に補助制度が整備されておらず、国が単独で直接的に補助をする場合」と「地方公共団体に補助制度が整備されており、地方公共団体と国が併せて補助する場合」があります。
地方公共団体に補助制度がある場合は、国の補助制度と地方公共団体の補助制度とを併せて活用することで、耐震改修等の補助率が高くなるよう措置されています。この場合、耐震対策緊急促進事業の窓口は、当該する地方公共団体となります。

大学や学校関連施設については、文部科学省が所管の耐震補助に対する補助金の仕組みとして「防災機能等強化緊急特別推進事業」があります。私立大学に対して助成されるものです。選定手続き等においては緊急性や計画調書の内容等を審査の上、補助要件に合致しているものに関してのみ原則として採択されています。

各地方自治体における耐震補強の補助金の例

耐震診断における補助金は、各自治体によって異なります。おもな自治体の非住宅の耐震診断に対する補助金は、次のようになっています。

自治体名 建築物件築年
による条件
補助金の割合 その他要件
埼玉県さいたま市 昭和56年5月31日以前に着工 66.6 %~100% 病院・診療所、劇場、観覧場、映画館、演芸場、百貨店、マーケット、その他の物品販売業を営む店舗、ホテル・旅館など
神奈川県横浜市 昭和56年5月31日以前に着工 66.6%~66.6%(限度額:360万円) 多数の人が利用する建築物等で原則3階以上かつ延床面積1,000㎡以上 など
千葉県千葉市 昭和56年5月31日以前に着工 66.6 %~66.6%(限度額150万円) 緊急輸送道路沿道(法による耐震診断の義務付け無、高さL/2(L=12m)又は高さ6m(L≦12m)L:前面道路幅員)など
愛知県名古屋市 昭和56年5月31日以前に着工 66.6 %~66.6%(限度額150万円) 延べ面積による上限あり ・病院・診療所、劇場、観覧場、映画館、演芸場、百貨店、マーケット、その他の物品販売業を営む店舗、ホテル・旅館等で 一定以上の階数・面積を有する建築物など
京都府京都市 昭和56年5月31日以前に着工 66.6 %~66.6%(限度額200万円) 特定既存耐震不適格建築物(病院,避難所,避難路等沿道建築物,修学旅行生が利用する旅館ホテル)など
兵庫県神戸市 昭和56年5月31日以前に着工 66.6 %~66.6%(限度額514万円) 小学校、中学校等、体育館・運動施設、病院・診療所、劇場・映画館等、集会場・公会堂、展示場、百貨店・マーケット 等、ホテル・旅館、老人ホーム・福祉施設等、幼稚園、博物館・美術館・図書館等、銀行、自動車車庫等で一定以上の階数・ 面積を有する建築物など
静岡県浜松市 昭和56年5月31日以前に着工 66.6 %~66.6% なし
東京都墨田区 昭和56年5月31日以前に着工 50%~66.6% 限度額:木造の場合は、7万5千円又は15万円。非木造は、面積により異なり50万円~204万5千円など
東京都目黒区 昭和56年5月31日以前に着工 50%~50%(限度額30万円) 所有者対象 、地域要件なしなど
東京都中央区 昭和56年5月31日以前に着工 66.6%~66.6%(限度額50万円) 所有者要件:個人又は中小企業など

自治体にもよりますが、ほとんどの自治体で建築物件築年による要件と建物の種類などによる限度額がもうけられています。
住宅または病院、学校、旅館・ホテルなどの所在地毎の補助制度の概要(補助金の対象や補助率等)は次のページで調べることができます。

耐震補強に必要な条件と方法

耐震補助金対象家屋となる条件とは

「補助金対象家屋」となるには条件があります。詳細は各自治体によって異なりますが、一般的には、「築年数」「建物の構造」「建物用途」によってきまります。
築年数は、多くの場合、「昭和56年5月31日までに建築確認を受けた木造住宅」が条件となります。昭和56年5月31日以前の建物は「旧耐震基準」で建てられているからです。つまり、「新耐震基準」を充足していない可能性があるため、助成が行われるわけです。
「建物構造」については、木造軸組み工法で2階建以下の建物が、補助金対象です。自治体によって、他の工法(伝統工法、ツーバイフォー住宅)の対象としています。(3階建て以上の住宅は、特殊な耐震工事や構造計算が必要となるため補助金の対象外となることが多い)「建物用途等」については、戸建て住宅であればOKですが、賃貸住宅で所有者と居住者が異なる場合は、所有者が耐震診断をすることが条件にとなります。また、店舗等併用住宅は制限がある場合が多いので確認が必要です。
また耐震診断の結果、評点1.0(一応倒壊しない)というレベルを満たしていない場合は、「一応倒壊しない」レベルになるように補強工事を実施することが補助金交付の要件となります。

<耐震診断の評点>

上部構造評点 判定
1.5以上 倒壊しない
1.0以上~1.5未満 一応倒壊しない
0.7以上~1.0未満 倒壊する可能性がある
0.7未満 倒壊する可能性が高い

2段階の補助金設定

一般的な耐震補強には、評点1.0未満を1.0以上にする一般改修で行いますが、評点が0.7未満の低い数値しかもたない建物に関しては、補強工事にかかる負担が多くなる可能性があるため、段階的改修の補助金が適用できる自治体があります。
段階的改修とは「工事費用が一度にかかるのは困る」「建物を使いながら工事をしたい」といった都合により一度に耐震改修工事を実施することができない建物について、二度に分けて(段階的に)耐震改修工事を行うものです。たとえば、第一段階で2階建て建物の1階部分の上部構造評点を1.0以上とし、第二段階で建物全体の上部構造評点を1.0以上とする耐震補強を行います。

耐震補強の補助金の申請方法

補助金の申請には、補強計画の事前審査が必要です。行政による耐震診断が行われたのちに、補強計画の設計書・計画書の作成を行い、その補助金申請手続きが通った後に、交付決定・工事契約が行われます。工事が終了し、代金が支払われたのち、完了報告書と耐震審査があり、最終的に補助金が受け取られる形となります。
耐震補強の補助金をしっかり受け取ることができるような事業計画書を作成することが大切です。
日本メックスでは豊富な実績をもとに、耐震設計から耐震工事まで対応しています。

(文:伊東慎一)

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