SDGsやパリ協定などを背景に社会から企業への省エネ化の要請が強まる中、照明の2020年問題といわれる蛍光灯器具や水銀ランプ生産中止などの情勢を受けてオフィスや事業所の設備担当者の間では、省エネ効果が高く電気代の削減につながるLED照明の導入や空調設備の更改への関心がますます高まってきています。
このような情勢の中、設備更改が必須と理解はしていても、導入に伴うコスト等が課題となり、実施に踏み切ることをためらう企業も少なくないのではないでしょうか
そこで今回は「コストを上手に節約して、照明や空調設備を更改したい」「電気代の削減に取り組みたい」 そんな皆さんのために、国や自治体からの補助金、助成金を活用するための基本情報やスムーズに導入工事を進めるためのポイントを紹介します。
LED照明導入・空調更改に使える補助金
オフィスのエネルギー消費の大半を占める照明設備と空調設備の省エネ化は、社会を挙げて対応すべき課題とされており、国や自治体による様々な補助事業が実施されています。
LED照明の導入や高効率な空調への更改を進める時に受けることができる代表的な省エネ補助金が、経済産業省による「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金(エネルギー使用合理化等事業者支援事業)」です。この事業は、省エネ性能の高い機器や設備導入にかかる経費の一部や実施にかかる経費を補助することで、日本国内の法人の省エネルギー対策を支援することを目的に運営されています。他にもLED照明をはじめ省エネ機器の導入を支援する補助金や助成金を交付する事業は、各自治体によって活発に行われています。
東京都が実施する事業としては、「LED照明等節電促進助成金」(東京都中小振興公社)があり、また都内の各区も「事業所用自然エネルギー・省エネルギー機器等導入費助成(中央区)」「千代田区省エネルギー改修等助成制度(千代田区)」「省エネルギー診断結果に基づく設備改修助成(港区)」「事業所用LED照明設置助成事業(品川区)」「令和2年度新宿区新エネルギーおよび省エネルギー機器等導入補助金制度」(新宿区)といった形で、LED照明の導入や空調の更改などを支援しています。
こうした省エネ補助金は、ほとんどの場合、各年度の予算によって実施されるため申請期間が定められており、そのスケジュールに合わせて、申請に関わる作業を行わなくては対象となることができません。したがって、補助金を受けて省エネや電気代の削減を図りたいならば、国や自治体のWEBサイトを常にチェックする必要があります。
●主な省エネ補助金(東京都心エリアの例)
補助金名 | エリア | 補助内容 | 申請期間 |
---|---|---|---|
省エネルギー投資促進に向けた支援補助金 | 全国 | 1/3以内 (中小企業の場合) |
2020年5月20日~6月30日 |
LED照明等節電促進助成金 | 東京都 | 助成対象経費の1/2以内 上限1500万円 下限30万円 |
第一期…令和2年 5月18~25日 第二期…令和2年 6月23~30日 第三期…令和2年 7月20~27日 第四期…令和2年 9月10~18日 第五期…令和2年 11月24~27日 第六期…令和3年 1月22~29日 |
事業所用自然エネルギー・省エネルギー機器等導入費助成 | 東京都 中央区 |
導入費用の20% 上限20万円 |
~2021年3月末 (予算枠内で終了) |
千代田区省エネルギー改修等助成制度 | 東京都 千代田区 |
対象経費の30% (テナント・事業所ビルの場合 上限150万円) |
~2021年2月15日 |
省エネルギー診断結果に基づく設備改修助成 | 東京都 港区 |
設置に要する経費の1/4 上限100万円 | 2020年4月1日~2021年2月26日(予算枠内で終了) |
事業所用LED照明設置助成事業 | 東京都 品川区 |
購入+施工費用の10% 上限30万円 |
2020年4月1日~2021年3月19日(予算枠内で終了) |
令和2年度新宿区新エネルギーおよび省エネルギー機器等導入補助金制度 | 東京都 新宿区 |
施工経費の50% (40万円) |
2020年4月13日~ 2021年2月12日(予算内で終了) |
※詳細や現在の状況は、各事業のWEBサイトで確認ください。
省エネ補助金の助成対象者について
LED照明導入や空調更改に省エネ補助金を活用したいのであれば、まずは自社が受けたい省エネ補助金の対象者にあてはまるかを確認してください。助成の対象は、それぞれの省エネ補助金ごとに細かく規定されています。「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金(エネルギー使用合理化等事業者支援事業)」の場合は、<区分Ⅰ>工場・事業場単位と<区分Ⅱ>設備単位の2つの区分で省エネ補助金が給付されます。<区分Ⅰ>工場・事業場単位の対象は、幅広い業種の中小企業・大企業です。既設設備やシステムの改善、プロセスの改善、エネルギーマネジメントシステムの導入等による工場や事業場等の省エネルギー化といった取り組みの「設計費」、「設備費」、「工事費」などが補助されます。
<区分Ⅱ>設備単位は、幅広い業種の主に中小企業(中小企業基本法の定義による)を対象としており、一定以上の省エネルギー性の高い設備に更新する際にかかる「設備費」が補助されます。「設計費」、「工事費」などは含まれません。対象となっている設備については令和2年度の公募要領では、高効率空調、産業ヒートポンプ、業務用給湯器、高性能ボイラ、高効率コジェネレーション、低炭素工業炉、変圧器、冷凍冷蔵設備、産業用モータと定められています。ご覧いただいておわかりいただけるように、高効率空調は対象となっていますが、高効率照明(LED照明)は含まれていません。そのためLED照明導入で補助金を受けるためには、<区分Ⅰ>工場・事業場単位として、「投資回収年数が5年以上」、「事業全体の設備費のうち照明に係る設備費が50%未満」といった要件を満たし、空調の更改など他の設備導入と組み合わせた形で申請することになります。「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金」の詳しい情報は、同事業の執行団体である一般社団法人 環境共創イニシアチブのWEBサイトで確認することができます。
省エネ補助金申し込み方法
省エネ補助金への申し込み方法は、皆さんが利用する制度によって異なります。たとえば、「エネルギー使用合理化等事業者支援事業(経済産業省)」では、事業計画の立案、調達する設備のコンペによる選定などをしたうえで、所定の団体が運営するポータルサイトからの入力や申請書の提出を行い、審査を通過しなくてはなりません。審査では「申請された事業の内容が交付規定や公募要領の要件を満たしているか」「資金計画や工事計画が適切なものになっているか」「導入する省エネ設備が、設備区分ごとに定められている基準値(環境性能)を満たしているか」などが厳密に評価されます。そして、審査結果の上位者から、予算の枠内で補助金を受けることができる申請者が選ばれます。
こうした審査タイプの補助金は、当然ながら申請すれば必ずしも受けとることができるとは限りません。また、自治体が実施する省エネ補助金の中には、条件を満たした申請者に先着順で交付されるタイプのものも多くあります。
補助金のタイプ | |
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■ 審査タイプ | 申請書類を作成し、審査を通過すれば補助金を受けとることができます。審査結果をもとに、さらに選ばれないと補助金を受けられないものと規定条件を満たせば受けられるものがあります。 |
■ 先着順タイプ | 申請条件を満たした者であれば、予算の枠内で先着順に補助金を受けることができます。 |
省エネ補助金に応募するにあたって、各担当者は様々な必要書類を用意し、手続きを取らなくてはなりません。普段は扱うことのない種類の書類作成に取り組むのは、少し大変かもしれません。しかし、補助金を受けることができれば、コストを最小限に抑えながら、自社の持続可能な経営につながる投資が可能となります。LED照明や高効率空調の工事を手掛ける企業の中には、日本メックスを含め補助金の申請のコツをよく知っていて、積極的にアドバイスやサポートを提供してくれる企業がありますから、是非一度相談することをお勧めします。
LED更改、空調更改の必要性
オフィスや事業所の設備を担当する皆さんは、「照明の2020年問題」というワードをどこかでお聞きになったことがあるのではないでしょうか。経済産業省は、「新成長戦略」「エネルギー基本計画」といった未来に向けた国家戦略の中で、従来まで照明器具の主流だった蛍光灯器具や水銀灯の生産を2020年中に終了し、LED照明や有機EL照明に100%切り替えることを方針として打ち出しています。一般社団法人日本照明工業会も、政府の方針、さらには水銀や水銀化合物の人為的排出から人の健康、地球環境を保護することを目的とする「水俣条約」の発効を受けて、水銀を使用する蛍光灯器具や水銀灯の製造を2020年に中止することを目標に掲げています。実際に大手メーカー各社の動きをみても、2019年3月から蛍光灯照明器具の生産終了が着実に進行しています。つまり私たちが長らく慣れ親しんだ蛍光灯は、新たに調達することができなくなっているのです。まさに今こそLED照明への切り替え時といえるでしょう。また、省エネや電気代など建物、オフィスの維持管理に関連するコスト削減をより確実に推進したいのであれば、オフィスで消費されるエネルギーの30%近くを占める空調設備(出展 財団法人省エネルギーセンター「オフィスビルの省エネルギー」)についても、放置することはできません。空調設備の寿命は13年・15年(建物付属物としての法定耐用年数)とされていますから、省エネタイプに置き換えるべきタイミングにある企業も少なくないのではないでしょうか。空調設備関係の主な改修項目としては、高効率機器への更新、空調ゾーニングの見直し、蒸気弁、配管の断熱、全熱交換器の設置などがあります。これらのポイントについて、それぞれの予算や設備状況に応じて適切な対策を施すことにより、電気代の削減をはじめ最適なビルマネジメントにつなげることができます。ただし温度や湿度、気流などを高度にコントロールし、入居者にとって快適な空間を実現する空調設備を扱うには、空調に関わる機械や配管の工事はもちろん、建物の構造にも精通していることが求められます。ですから空調のみならず建物の保全業務にも確かな実績を持つ企業の力を借りることが理想的です。
出展 財団法人省エネルギーセンター「オフィスビルの省エネルギー」
LED照明への切り替えや、高効率な空調への更改に取り組むにあたって、コストの他にもうひとつ、経営的な観点から見逃すことのできない問題があります。何かというと、「日常業務への影響」です。省エネ補助金を活用してコストの問題がクリアできても、工事の間、今まで通りにオフィスが使えないことが原因で、生産性がダウンしたり、社員にストレスが生じたりしては、経営的には大きなダメージとなります。そこで注目したいのが、「居たまま工事」という手法です。業務に使用するフロアを計画的に移動させながら工事を進める「居たまま工事」により、通常の事業活動を維持した状態でLED照明や高効率空調の導入工事を完了させることが可能になります。
日本メックスは、長年にわたって建物の維持管理や保全工事に取り組む中で、補助金を利用した省エネ設備の導入や「居たまま工事」についての豊富なノウハウを蓄積しています。「コストを抑えて、速やかにLED照明や高効率空調へ」という皆さんは、お気軽にお問い合わせください。