ライフサイクルコストを考えることは、投資をするにあたっての費用対効果を評価する手法としては、今やあたり前になっています。特に、大きな金額を投資し、一般には長期に使い続けることになる建物の場合は、ライフサイクルコストをいかに最適化するかが、事業収支を大きく左右します。ライフサイクルコストを考えたら、いかに建物をつくるべきか?いかに維持管理をはかるべきか? 皆さまの建物管理をライフサイクルコストから見つめなおしてみてはいかがでしょう。
ライフサイクルコストとは?
ライフサイクルコスト(Life cycle
cost)とは、製品や構造物(建物や橋、道路など)がつくられてから、その役割を終えるまでにかかる費用をトータルでとらえたものです。生涯費用と呼ばれたり、LCCと略されることもあります。建物の場合、企画・設計から建設、運用を経て、修繕を行い、最後に解体されるまでに必要となるすべての費用を合計したものです。
建物を総合的に管理することで、より効率的あるいは戦略的に経営しようという手法ファシリティマネジメント(FM)においても、ライフサイクルコストを考えることが重要な課題となっています。
ライフサイクルコストは、イニシャルコスト+ランニングコストからなります。イニシャルコストというのは、その建物をつくるためにかかる初期建設費です。ランニングコストというのは、その建物を使い続けるために必要な費用で、エネルギー費、保全費、消耗品費、税金、保険など、その内容は非常に多岐にわたります。
ライフサイクルコストの重要性
ライフサイクルコストの試算
建物のライフサイクルコストは、ランニングコストが多くのウエイトを占めます。一般的なオフィスビルでは建物を作ることにかかる費用よりも、作った後で建物を使うための費用の方が4倍近く多くなるという試算もあります。かといって建物を作る、つまり企画・設計、建設といったプロセスが重要でないというわけではありません。どんな設計をして設備を導入すれば省エネができるのか?どんなメンテナンス計画を実行すれば無駄なコストを抑えられるのか?など中長期的なプランとして建物運営を検討できるのは、作る段階にほかならないからです。
ライフサイクルコストと建物の寿命
同じ額の費用の投入で建物をより長く使おうという考え方をすることで、建物のライフサイクルコストを最適化することができます。それを実行にうつすと具体的にどうなるかというと、建物の修繕の定期的な実施です。竣工時に、ライフサイクルコストの視点から建物の長期修繕計画を作成することで、建物の資産価値の維持・向上をはかる企業、ビル所有者が増えています。
ライフサイクルコストの誤差を考慮
建物のライフサイクルコストを考える時に、忘れてはいけないのが、「ビルや企業経営を取り巻く環境は変化する」ということです。建物の寿命は60年ともいわれますが、使用期間が長ければ長いほど、ライフサイクルコストの計算には誤差が生じてしまいます。
経済環境をはじめとする外的な要因が変化するばかりでなく、「設計や指示書にミスがありメンテナンス費用が増大してしまった」「使用期間・頻度などの見込み違いによって減価償却期間にずれが生まれてしまった」など、内的な要因でも思いもよらぬ事態がおこりえます。
想定外の費用が発生することを完全に防ぐことは困難ですから、企画の段階で、誤差も考慮しながら柔軟な計画を立てることが大切です。
ライフサイクルコストの低減を工夫する
ライフサイクルコストを低減する具体的な方法には、次のようなものがあります。今すぐ皆さまのビルに取り入れることができる取組みもあるのではないでしょうか。
長寿命・高耐久の部材や機器を採用する
長寿命タイプ、高耐久性タイプの部材を使用することで、修繕や更新にかかるコストを抑制することができ、建物を長く使うことにもつながります。
エネルギーや水の使用量を抑える工夫をする
割安な深夜電力を昼間に利用できる蓄電システムやエコキュートを採用したり、電気の消し忘れを防止する人感センサーを設置したりすることで、資源にかかるコストの節約を図ることができます。
維持・管理をしやすくする
維持管理が楽になるように、建築を設計することで、それにかかる人的コストを削減することができます。また、特殊な設備や部材を使用すると、その交換が割高となりますから、簡単に調達できる部材の採用を心掛けることもコスト削減の鉄則です。
まとめ
建物のライフサイクルコストを抑えるには、まずは企画・計画段階から取組むことが理想的です。ただし、建物を使っている途中からでも、専門家の知恵を借りながら、より望ましいライフサイクルコストを目指して、ランニングコストを改善することは十分にできます。ライフサイクルコストの大部分を占めるランニングコストにフォーカスしたコスト削減策の検討は、経営意思決定の常識となっています。
日本メックスは、建物の維持管理における豊富な経験をもとに、保守点検、省エネ、運用管理など、あらゆる側面からお客さまにライフサイクルコスト削減に向けたご提案を進めています。わかりやすく安心いただける料金システムでの対応に努めていますから、まずは無料見積もりからお気軽にご相談ください。
(文:伊東慎一)