CRE(企業不動産)戦略を推進することは、日本企業を強くすることです。日本企業は約500兆円の不動産を所有していますが、同業種の欧米企業と比較すると約2~3倍。つまり同じ製品やサービスを提供するのに必要な不動産が日本企業の方が何倍も多い、要するに生産性が劣るとされているのです。CREにより、不動産を効率的に活用することは、日本の競争力強化のために必須となります。もちろんCREは、皆さま自身のビジネスの強化にも役立てることができます。中長期的な成長を目指すために、CREの基本的な考え方を是非知っておいていただきたいと思います。
CREとは?
CRE(Corporate Real Estate)と言う言葉は、企業不動産と訳されています。企業が、事業を行うために、保有(賃貸借)をしている土地や建物をさします。事業に使う事務所や店舗、工場のほか、福利厚生施設もCREにあたります。
CREと対となる言葉が、PRE(Public Real Estate)です。公的不動産と訳され、国・地方公共団体が保有する不動産を合理的に活用すべきという考えから生まれた用語です。公共公益のために地方財政を運営するという視点から、遊休地や未利用の土地・建物の活用、非効率な不動産の使い方の再検討などを行う取り組みがPRE戦略と呼ばれています。
企業価値を高めるCRE戦略の重要性
CRE戦略とは?
CRE戦略の意味は、「経営戦略の一環として自社の企業不動産を活用すること」です。企業不動産を、単に保有するだけでなく戦略的に活用(購入、売買、投資)することで、企業全体としての価値を高めようというのが、その狙いです。不動産の戦略的活用と聞いて、多くの方が「それほどできることは、多くないのでは?」とお感じになるかもしれません。ところがそうではなく、企業はCRE戦略を通して、不動産を本業で利用したり、売買や賃貸借をしたり、有望なビルや事業に投資したりして、利益を得ることはもちろん、実に様々なメリットを追求することができます。
CRE戦略の目的
CRE戦略では、土地や建物を保有するだけでなく、それを有効活用(売却、購入・投資)することで、資産を最適化することを目指します。最適化というと抽象的でわかりづらくなりますが、「投資家をはじめとする関係者からの評価や価値を良くすること」と言い換えてもいいでしょう。ひとつの具体例をあげてみましょう。CRE、企業不動産は、企業にとって最大の固定資産です。製造業で総資産の数10%、鉄道や電気・ガスなどのインフラ産業では50%近くを占め、その維持管理コストは、製造業で売上全体の3~5%、インフラ産業では20%~30%を占めるとされています。これらを適切にコスト管理し、スリム化することは、利益や生産性向上、ひいては業績に大きく貢献します。またCREのスリム化は、ROA(総資産利益率)ROE(自己資本利益率)※1 など経営指標を改善し、経営体質を強化します。その他、ワークプレイスや福利厚生施設などのCREを上手に使うことは、従業員の満足度向上、企業内の活性化にもつながります、
※1 ROA(Return On Asset):総資産利益率= 当期純利益 ÷ 総資産 × 100/ ROE (Return On Equity):自己資本利益率=当期純利益÷自己資本× 100
CRE戦略のマネジメントサイクル
CRE戦略に係るスタンダードとなる考え方を示すことで我が国のCRE戦略を活発化するために、国土交通省では、「CRE戦略を実践するためのガイドライン」を発表しています。このガイドラインでは、不動産の取得から処分に至るまでの適切な意思決定を行うマネジメントサイクルを次のように表しています。
初めてCRE戦略を推進する場合は、まずはResearch(リサーチ)を実施し、自社の企業不動産のポートフォリオの全体像を的確に把握します。続いてResearch結果をもとに、自社のニーズや経営戦略、状況に合わせてCREをポジショニングし、具体的な施策の計画、Planning(プランニング)を行います。そして次のステップで、具体的な施策を実行するPractice(プラクティス)へと進み、その効果を検証するReview(レビュー)を経て、現状評価や分析評価手法を見直すAct(改善)に取り組みます。その後再び、プランニング→プラクティス→レビューのサイクルを循環させます。

まとめ
不動産証券市場の創設により、不動産の流動化が進んだことで、規模の大きな上場企業だけでなく、非上場企業、中小企業など多くの皆さまにとってもCREは、非常に意味の大きなものとなっています。CREは、有効に活用すれば、多大な利益につながります。しかしその反面、CREは取り扱いを誤ったり、怠ったりすると、不動産の下落など、損失を招いてしまうこともあります。またCREというのは、建物や設備の設計や管理上の法令違反すなわちコンプライアンスリスクや、環境(土壌汚染、アスベスト)リスク、自然災害(地震及び風水害等)リスクなどを伴うことも忘れてはなりません。 日本メックスは不動産におけるトータル維持管理は基より建物改修のご提案並びにCRE戦略の一翼を担う中長期計画のご提案をいたします。
(文:伊東慎一)