コラム 技術者の眼 第4回
「トンネル止水工法(KS工法)について」
1.はじめに
日本メックス株式会社はNTTグループの関連会社として、NTT建物の維持管理ならびにそれに伴う工事を行っており、その技術を公的施設や民間などの建物にも展開している会社です。微力ながら、NTT基盤設備の維持管理にも貢献しており、これから二回にわたって、弊社で開発して標準工法になっている技術の概要をお伝えします。
今回は新たに開発した通信ケーブルトンネル(以下とう道と呼びます)に流入する地下水を止水する工法(以後、KS工法と呼びます)の概要をご紹介します。
2.NTT基盤設備について
NTT基盤設備は、都市内ならびに都市を結ぶ幹線道路の下に面的に広がって敷設され、通信を支える多くのケーブルを収容しています。
北海道から九州までの設備量は膨大で、通信ケーブルトンネル(以後、とう道と呼びます)は約600km、国土交通省が管理する共同溝(ガス、電力、通信などの設備を収容するトンネル)を合わせると約1000kmになります。(NTT技術ジャーナル2006.3より引用)
2011年3月11日に発生した東日本大震災はその震度が大きかったとともに広域に津波が発生して甚大な被害を及ぼしたことはご存知の通りです。
NTTの通信にもいろいろな影響が出ました。東北電力の商用電源が長期に断絶したことで、携帯電話が繋がらない状況が発生し、液状化により管路・マンホールなどにも各地で影響がありました。
3.KS工法開発の経緯
とう道は浅い部分では地震の影響を受けやすいので、東日本大震災でもひび割れが発生したり施工接手部では目開きしたりして漏水が発生しました。従来の一般的な止水工法ではドリルで削孔した後にウレタンを注入して止水するのですが、今回の地震のように余震が度々発生すると再漏水して工事をやり直すということが発生します。
NTT基盤設備の管理運用をしているNTTインフラネット㈱のとう道担当者から2011年5月に、「今回の大地震を契機に、従来のように繰り返しの止水工事が発生しないような止水工法ができないだろうか」という相談を頂き、お付き合いのあった大阪府高槻市の樹脂メーカー・サンユレック㈱と検討して、「エポキシ樹脂の接着力で地下水圧に対抗して止水する工法(KS工法)」をベースとした開発を行うことになりました。実験を繰り返す中で、特許も共同出願(NTTインフラネット、サンユレック、日本メックスの3社共同出願)し取得しました(特許第5377715号)。
その後、国土交通省の新技術提供システム(NETIS)にも登録して、幅広くいろいろなトンネルで活用していただけるようにしています(NETIS登録番号 KK-180020-A)。写真は九州地方整備局主催の令和元年度「新技術・新工法説明会」(2019.10.31)にNTTインフラネットと連動して展示・説明した時の状況です。
最初に開発した工法は地下10m程度の水圧に耐えるものでしたが、その後地下50mの水圧に耐えるものも開発しましたので、ほとんどの地下トンネルに適用できる止水工法になっています。
KS工法の技術詳細と施工事例ならびにビデオは下記でご覧になれます。
次回はマンホール・ハンドホール補強技術のご紹介をします。