コラム 技術者の眼 第3回
「品質&安全確保のための研修施設活用の取組み」
2020年2月19日から22日にかけて公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)主催の「ファシリティマネジメントフォーラム 2020」が行われました。
当社技術部 栁澤庸治が「品質&安全確保のための研修施設活用の取組み」 について発表しました。
今回発表の概要を紹介しますので、当社の品質&安全確保のための取組みについてご理解を得られれば幸いです。
当社の品質&安全確保のための研修施設活用の取組みについて、研修施設を紹介します。
当社には2つの研修施設があります。
OTCと呼ばれるオペレーショントレーニングセンタと、STC:セーフティトレーニングセンタです。
OTCは品質維持向上を目的に建物設備の操作点検をトレーニングする施設です。
STCは事故撲滅を目的に、安全技術力向上のための安全研修施設です。
OTC:Operation Training Center
オペレーショントレーニングセンタについて説明します。
OTCは、維持管理業務における“日本メックスならでは”の品質維持向上を目的に、建物設備機器の操作や点検をトレーニングする施設です。
当社では維持管理業務全般に複合技術者など、高度技術者を育成し継続的に確保するため実務研修の充実を図り、社員などの技術レベルの向上に活用しています。
OTC では上記 5 つのカテゴリーを軸に研修を実施しています。
電気設備コーナー
高機能ビルであるデータセンターなどの高信頼性受電設備と一般オフィスビル等の受電設備を設けています。
受電設備としては高圧受電、低圧受電、そのほかに UPS、非常用発電機などの一連の設備も設けています。
電気設備コーナーにおいては主に受電設備の点検、操作、試験などをトレーニングしています。
研修の特徴としては、法令に基づく、停電操作・各種保護継電器の正常性確認試験を実体験しています。
停電操作の実体験をする事により、安全及びスキル向上を図ることができます。
空調設備コーナー
空調設備コーナーでは一般的に導入されている空調設備として
・コンパクト型空気調和器
・空冷式パッケージ型空気調和機
・ビルマルチ型空気調和機
・その他として、高機能ビルのデータセンタ用空気調和機
の研修用装置を設けています。
それぞれの空気調和機の機能や特性を理解し、点検や操作の研修を実施しています。
特徴としては空気調和機をスケルトン化(パッケージを透明に)して研修を実施しており、スケルトン化する事により空調機の中身(構造)が見え、より空調機への理解が深まります。
防災設備コーナー
防災設備コーナーでは、様々な防災設備の特徴や種類を理解し操作点検方法を研修しています。
模擬的に防災設備を作動させ、非常時・緊急時に防災設備がどのように作動するかを体験します。
また各主要メーカごとの火災報知器、火災受信機、消火設備などもそろえ主要メーカごとの特徴や操作方法も研修しています。
衛生設備コーナー
衛生設備コーナーでは、一般家庭や事務所ビル等にあるトイレや洗面器などの衛生設備機器の種類や特徴を研修しています。また給排水設備のタンクやポンプの研修も実施しています。
特徴としては、空調設備と同じく衛生設備の機器や配管をスケルトン化し構造をより理解できるようにしています。
ICT コーナー
ICTコーナーでは、当社が開発したスーパーアイメック(タブレット端末で点検し、クラウドサーバーを活用した維持管理のデータベースシステム)を研修します。ICTを利用して維持管理の効率化と 建物の総合管理を行う維持管理システムの研修により、お客さまの経営の効率化を支援します。
以上 OTC では
電気設備、空調設備、防災設備、衛生設備、ICT を軸に、維持管理業務における“日本メックスならでは”の品質維持向上を目的に研修を実施しています。
STC:Safety Training Center
セーフティトレーニングセンタについて説明します。
セーフティトレーニングセンタは、事故撲滅を目的とした安全研修施設です。
この研修施設を活用し、保全工事・維持管理に携わる社員はもとより営業・総務・経理など事務業務を含む全社員がこの STC で安全研修を受講しています。
また、保全工事の協力会社の職長や作業員の方々にも研修を受講していだき、日本メックス関係者全員で安全に取り組み、事故撲滅を目指しています。
STC 安全研修の特徴は、座学ではなく、「視て、触れて、感じて」の体験・体感型研修となっています。
一人ひとりが体験・体感する事により、より一層安全への理解を深め、安全行動・安全活動に役立てる事ができます。
STC では
・安全コーナー
・模擬体験コーナー
・高機能ビルコーナー
この 3 つのカテゴリーを軸に研修を実施しています。
安全コーナー
安全コーナーでは、事故を忘れない、風化させない。また同じ事故を起こさないよう過去の事故を教訓に再発防止策の研修を実施しています。
模擬体験コーナー
模擬体験コーナーでは、文字通り様々な模擬体験をして安全への理解を深めます。
中央の写真は墜落災害の体験、ぶら下がり体験の写真です。
この写真の墜落災害を体験しているのは当社の代表取締役社長の今泉です。
当社のトップが率先垂範して安全体験を行い、全社・全社員での事故撲滅を目指しています。
高機能ビルコーナー
高機能ビルコーナーではデータセンターなどの重要性や特殊性を理解する研修を実施しています。
模擬体験コーナー
ここからは模擬体験コーナーの代表的な体験研修を何点か説明させていただきます。
最初に VR(バーチャルリアリティー)を利用した仮想事故体験について説明します。
VR とは、コンピューターグラフィックスで再現した空間に、体験者自身が入り込み世界を体験します。
ヘッドマウントディスプレイを装着し視聴することで、360 度の空間全体を仮想体験できます。
この VR を利用する事により仮想現実で事故体験ができます。
仮想事故を体験する事により、事故の恐さ、安全対策の重要性を認識する事ができます。
当社で体験できる仮想事故体験は
・仮設足場からの墜落体験
・建設用クレーン使用時に荷揚げしている材料が落下してしまう落下災害体験
このほか、土砂崩壊災害や重機との接触災害、電動工具による災害など、10 コンテンツの仮想体験が可能です。
墜落体験(ぶらさがり体験)
建設業の労働災害では墜落災害が常に上位にあります。墜落災害を防止するための、ぶらさがり体験を実施しています。
また 2019 年 2 月に法改正となり、着用が義務付けられた、墜落制止用器具(フルハーネス)の着用方法なども同時に研修しています。
実際に墜落して救助されるまでは約 1 時間かかるといわれています。この時間を踏まえて、墜落し宙づりとなった時にどの様な状況になるか、また本当に耐えられるのかなどを実際に体験し墜落災害の防止につなげています。
仮設足場体験
先ほども説明したとおり、事故の中でもっとも多い災害が墜落災害です。この墜落災害が起きやすい作業が仮設足場上での作業になります。
仮設足場には枠組足場やクサビ形足場など様々な種類があります。
それぞれの仮設足場の特徴を学ぶことによって、安全対策や作業用途に適した仮設足場の選定ができるようになり、墜落災害の防止につながります。
STC 安全研修施設には枠組足場、クサビ形足場、張り出し足場があります。研修では仮設足場の通行体験を実施しています。
フルハーネス、墜落制止用器具を着用し、足場上を歩いて渡ります。
足場上の歩きにくさや墜落制止器具の必要性などを体験し学んでいます。
埋設物破損防止体験
当社が得意とする改修工事では、お客様が「居たまま」、お客様の設備が「動いたまま」工事を行います。
生きている建物には、生きた設備配管や配線があります。その生きた配管や配線に損傷を与えてしまうとお客様の設備が止まり、お客さまに多大なご迷惑をかけてしまうことになります。
そのようなトラブルを防止する為の研修が埋設物破損防止体験です。
特に気を付けなければならない作業が、コンクリートの壁や床に穴をあける作業です。
コンクリートの壁や床の中には生きた配管や配線などがあります。当然ですがコンクリートの中なので普通に見ても生きた配管や配線がどこにあるかわかりません。
また、コンクリートに穴をあける作業を実施する場合には作業前に埋設物の探査を行い、作業時には金属探知型電工ドラムを使用します。
金属探知型電工ドラムというのは特殊なドラムで穴あけ工具(ドリル)の刃先が金属に触れると電源が落ちドリルの回転を停止させます。また、ブザーがなり金属に触れた事を知らせます。
埋設物破損防止体験では埋設物探査器の使用方法及び金属探知型電工ドラムの使用方法などのトレーニングを実施しています。
天井内体験
天井内作業もお客さまが「居たまま」お客さまの設備が「動いたまま」行う改修工事の特殊な状況のひとつになります。
天井内作業は、天井内という暗いスペースでの作業となります。また天井内には生きた配管や配線があります。
暗い天井内で作業を行っている時、天井を踏み抜いてしまったり、天井を落下させてしまう恐れがあります。
加えて、天井内の生きた配管や配線を損傷させてしまう恐れもあります。
このため天井内で作業を行う場合には、様々なルールがあります。
上下作業禁止、作業照度の確保、天井踏み抜き防止の作業床設置です。
そのようなルールを天井内に入り遮光カーテンを閉め消灯し、暗い天井内を体験することから学んでいます。
防災設備体験
生きた建物には火災報知器や消火設備など防災設備があります。
作業により誤って防災設備を作動させてしまうとお客様に多大な迷惑が掛かってしまいます。
防災設備体験ではお客様にご迷惑をかけないよう、防災設備の操作方法等を体験しながらトレーニングを行います。
まず防災設備が作動すると非常ベルが鳴動し避難放送等が流れます。
そして防災設備が連動し消火設備から消火剤が散布されたりエレベーターなど設備が止まったりさまざまな影響があります。
お客様の建物で誤って防災設備を作動させないよう受信機の操作体験 停止・復旧体験、またホコリが発生する作業などで火災報知器が作動しないよう感知器を養生する体験などを実施しています。
STC 安全研修施設では今ご紹介した体験研修以外にも、
・配管誤切断防止体験
・データセンタでの室温上昇体験
・非常錠開錠体験
・感電体験
など様々な体験研修を実施して、安全技術力の向上に取り組んでいます。
この STC 安全研修が実施できる施設は当社の本社にありますが、全国支店の社員や関係者が STC 安全研修を体験できるよう、STC 担当者が出向き、簡易体験版による研修を実施しています。
まとめ
当社では、OTC オペレーショントレーニングセンタ/STC セーフティトレーニングセンタという研修施設を活用して品質・安全確保のための技術力向上に取り組んでいます。
OTC・STC 研修施設の活用で期待される効果は次のとおりです。