コラム 技術者の眼 第1回
維持管理技術「エコチューニングによるビジネスモデルの構築について」
掲載の背景
当社は、2017年3月1日にエコチューニング認定制度における事業者認定を取得しました。エコチューニング事業は、環境省主導の事業であり、業務用等建築物を対象とし、「エコチューニング」により削減された光熱水費から収益を上げるビジネスモデルを確立させることで、効果的に温室効果ガスを削減することを目的としています。
当社が事業者認定を取得した2017年は、第一回目の認定でしたが73社が事業者認定を受けました。その多くをビルメンテナンス企業が占めており業界での関心の高さが伺える結果となりました。
1.エコチューニングとは
「エコチューニング」は環境省の造語であり、「低炭素社会の実現に向けて、業務用等の建築物から排出される温室効果ガスを削減するため、建築物の快適性や生産性を確保しつつ、設備機器・システムの適切な運用改善等を行うこと」と定義しています。
なお、「エコチューニングにおける運用改善」とはエネルギーの使用状況等を詳細に分析し、軽微な投資で可能となる削減対策も含め、設備機器・システムを適切に運用することにより温室効果ガスの排出削減を行うことをいいます。
大まかにとらえるならば、エネルギーの無駄を見つけ、その無駄に対し設備を適切に運用調整することでエネルギーを削減することであると言いかえることができます。
2.エコチューニング事業誕生の経緯
●事業の背景
環境省の「我が国の温室効果ガス排出量(2016年速報値)」によると、温室効果ガスのうちエネルギーを起源とするCO2排出量は11億4400万トンとなっており、そのうちビルメンテナンスに関係する事務所、ビル、商業・サービス等のその他業務部門におけるCO2排出量は2億1900万トンで全体の19.1%となっています。
なお、この2億1900万トンという排出量は1990年度比で約6割もの増加となっており、効果的な削減対策が喫緊の課題となっています。
2016年度(平成28年度)の温室効果ガス排出量(速報値)
●エコチューニングビジネスモデルの確立事業
このような状況の中で、2011年の東日本大震災が発生し全国的に節減対策が取組まれました。対策の中には、快適性や生産性を損なわずに省エネを進める施策も多くみられ、既存設備の適切な運用改善、いわゆるエコチューニングにより省エネやCO2削減を達成した事例も多くありました。
環境省はこの取組に着目し、エコチューニングをビジネスとすることで自立的・継続的に実施される仕組みが確立できるとし、エコチューニングビジネスモデル確立事業を閣議決定し2014年より開始されました。
3.エコチューニング事業の仕組み
このビジネスモデルは、当社のようなビルメンテナンス企業等が既存の設備やシステムを適切に運用調整することで光熱水を削減し、節約できた光熱水費をビルオーナー様とビルメンテナンス企業双方の利益とするという仕組みです。
また、削減できなかった場合でも、費用が発生することがないためビルオーナー様にとってはリスクの低いビジネスモデルといえます。
以前から運用調整により光熱水費を削減した事例はあり、その際エネルギー費削減分はどうするのかといった問題がありました。今回のエコチューニングビジネスモデルではそうしたニーズを環境省がビジネスモデル化し、社会的理解を高めることで企業においても継続的に温室効果ガスを削減することが出来るよう制度化したものです。
4.エコチューニングによる省エネ効果
●エコチューニング対象設備と対策のポイント
エコチューニングの対象設備は、電気・衛生・空調・搬送等ほぼすべての設備が対象となります。この中で、エコチューニング効果が高い設備としてあげられるのは空調設備となります。これは、一般的にビル全体の消費エネルギーに対する割合が多く、またビルの運用段階においては設計当初の想定と異なる使われ方をされている場合や、竣工後、数十年経過したビルにおいてはOA機器の省エネ化、LED化などにより内部発熱負荷が設計時よりも少なくなっているケースが多くあるからです。
この場合、引渡し当初の設定のまま運転されていると、運用実態とのギャップによりエネルギーの無駄が発生することになります。このようなところに運用調整の余地が生まれます。
●エコチューニング効果
環境省では、エコチューニングによる効果を実証するため135棟の様々な用途のビルに対し試行・検証を実施し、その結果、平均で7.5%、事務所ビルに至っては9.9%の削減効果があったと試算しました。当社で管理している2物件に対しても試験的に検証を行ない約6%~9.8%程度の削減効果が見込めると試算結果が出ています。
5.エコチューニング認定制度について
エコチューニング認定制度には、事業者認定制度があります。エコチューニング自体は誰でも取り組むことができますが、適切なエコチューニングを行うためには専門知識と経験が必要であり、エコチューニング推進センターで定めた事業者認定基準を満たした事業者がエコチューニング事業者として認定されます。
日本メックスではエコチューニング認定事業者としてお客様のニーズに応えるご提案をすすめてまいります。